くずかご

チラシの裏

P5R、ものすごいゲームになっていた クリア後感想です

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先日P5Rをクリアしました。P5というゲームがものすごいことになっていた。これはちゃんと自分の中で言語化して残しておかないとと思ったので書きます。考察等ではなくあくまで私の主観と好みによる感想です。あしからずご容赦ください。

 

※P5R及び他ペルソナシリーズのネタバレも含みます、ご注意ください。

 

 

 

 

私はアトラスというかペルソナシリーズにおける設定やシナリオの「趣味の悪さ」みたいなものが大好きで*1、P3の本編自体がそうですし、P4のバッドエンド(何も救えないが、自分だけは生きていく)とかもこう…

純粋に、理不尽に死ぬとか殺されるショッキングさというよりも、「どうしようもない追い詰められ方」とか「大きな決断としての消失」とか「やるせなさ」を演出すのがペルソナシリーズは本当にうまいなと思ってます。

 

で、ここから5の話

元々P5無印は発売当時にプレイ済みで、私の中での所感は「シナリオは⭐️3.5くらい、UIが⭐️5000000000000000」て印象で

全体的にそつなく丁寧に作られているのを感じるし純粋に面白いけどシナリオ後半の急ぎ足とか、なんか追加で真エンド作る気アリアリだな~みたいのが気になってしまって…

ただその気になる部分はとにかく究極まで突き詰めた格好良くてスタイリッシュなゲーム画面が有り余るカバーをしてるな、という感想でした。

Rが出るとなった時もわりと「でしょうね~!」という感じで、結構ギリギリまで購入悩んでたのですがいうてペルソナシリーズのファンなので発売日に購入しました。

序盤から既に新要素やゲーム画面が変わっている事に驚きつつ大元は同じなので正直「さ、最初からこれをお出ししてくれ~~~!!!」とちょっと思ったりもしました。

ですが三学期までプレイした私は「これ……無印から3年後に出したことに意味があるな……」と思い知らされるのでした。

 

 

これもちょっと長めの前置きなのですが、P5無印をプレイした時一番感じたのは「ゲームとは関係なしに、私たちが勝手に想像して補完してしまう認識」を利用したメタっぽいトリックがうまい…という点です。

端的に言うとイゴールが本当は偽物で黒幕、という部分なんですけど、P5はPV初出当時から主人公たちが義賊であり、ピカレスクを題材とし今までの後期ナンバリング作品とは違う雰囲気ですという空気を出してたんですよね。

かつ、田の中さんが既に鬼籍に入られていることもあって、「8年ぶりのシリーズ新作なんだから声優変更も珍しい事じゃない」と勝手に補完して納得してたんですよ。

 

やられた…………と思いました。よく考えたら一番異質だし怪しいのにね!?

 なんというか、本編的に言えば「大衆の心理」を利用したいい意味での意地の悪さがあるなと思ってました。

 

話は戻り、今回発売となったRでの一番の注目点といえば、明智吾郎の存在ではないかと思います。主人公と対になるライバル的存在であり、無印本編でもう一人のトリックスターとして活躍、そして暗躍していました。

その最期はプレイヤーの想像の余地をかなり残す「消息不明」であり、SNS上等で救済や生存を望む声も多く見かけました。

例のイベントを初めて見た時の私は正直…正直「ず……ずるいな~~~~~……」という感想で………なんだか……追加DLCなり完全版なりで別ルート作る気満々な……感じだったから………

想像通りRのPVでロキ使用の明智がプレイアブル化しており、元々他ペルソナシリーズで「キャラクターの死亡イベントが後のバージョンで覆される」前例も既にある為、これもまた「ですよね~~」と思っていました。勝手に納得してたんです。

 

ですが、ですがです。

三学期のPVを観た時から何というか…嫌な予感というか、違和感の恐怖は感じていました。

結論から言うと、三学期に追加されたラスボスは、「現実に干渉し、その人を幸福『であるべき姿』に書き換える『曲解』という能力」の持ち主なのですが…

 

いや… それ……それって…… に、 二次創作のことやんけ~~~~~~~!?!???!???!??!!!!

 

ゾッとしました。私は長年いちファンであり…かつ、お目こぼしをいただいて二次創作している同人者でもあります。

作中では叶わなかった夢が実っている。作中で死んだはずの人間が生き返っている。

そういった『イフ』は常に当たり前のように目にしますし、妄想もします。

「優しい世界」と呼んで、いいな、とも思います。

実際『曲解を受け入れる』エンドで見られる怪盗団メンバーたちの表情はどれも明るく、幸せそうなんです。ストーリーを何も知らずにこの絵だけ見せられたらこれが真エンドの大円満?と思ってしまうくらい。

でもそれは理不尽な世界を己の反逆心で歯を食いしばって生きた彼らを否定することに他ならないんですよね……。メタ的に言うと、ここまでプレイしたP5Rのストーリー100数時間、全てを無にするエンドなんですよ。

こんなことある???????????

一見全員が幸福そうで、「優しい世界」である曲解の現実を…ここは『否』と選択することが正解なんだろうな……とプレイヤーに自然と思わせるこの……この………

せ……性格、悪~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!

あまりにも好(ハオ)になってしまいました。趣味が最悪。

 

曲解を使うボス、丸喜拓人のキャラクター造形もかなりヘヴィで、その人の幸せで『あるべき』論を曲げないんですよね。主人公たちに「受け入れない」と言われても素で「なんで?」みたいな感じなんですよ。ここまでのパレスのボスは多少なりとも自分のしていることが道理に反していると分かっていて、『他を踏み台にしても自分さえ良ければ良い』という悪人だったのですが、丸喜は『自分がどうなろうとも、痛みのない世界を作りたい』という思想。*2

痛みを乗り越えたからこそ今の生がある…というようなまさに怪盗団の人生のあり様、度外視です。救済という名前の暴力。

このあたりの「一方的な認識による幸福のおしつけ」感、誰も傷つかない世界が正解であるべき、という純粋なエゴ…もウッ……と刺さりました。個人的にちょうど……他シリーズのキャラの生存イフ同人誌を……描いていたから……………

常々、作中でドラマティックな死亡シーンのあるキャラクターの復活は、ファンの救済でありキャラクターそのものの救済ではないことが多いと思ってはいるのですが、こうも完成された作品として目の前にあらわれるともう愕然とするしか…ない…。

このシナリオの突き刺さり具合は無印で一気にプレイしてたら無かったなと思います。

3年の間に色んな公式イベントがあって、派生作品があって……ファンアートを見てきました。いちファンとして、キャラクターのこういう側面が、展開が見てみたいな~っていう、大衆の中の一個人である私の欲望が三学期のシナリオをより残酷に見せてくれました。アトラスの鬼!!悪魔!!天使!!

 

併せて触れておくと、最終パレスの攻略が間に合わない期限切れエンドの演出もすごく良かったです。

P5においてゲーム攻略はカレンダーシステムによる日数制限+パレスパート⇔日常パート(人間ステータス/コープ活動)⇔メメントスパートをそれぞれ行き来しなければいけない構成である為、常に今何を優先すべきか?の選択が重要になってきます。

毎回結構悩むんですよね、ダンジョン攻略したいけどコープの誘いが…とか。最初の頃は自由行動可能な範囲も少ないし、なるべく全MAXになるように効率よく進めたくて。

それでも人は常に選ばれなかった方の世界を見てみたくなる生き物で………気になるじゃないですか?コープの好感度上がんない方の選択肢とか、バッドエンドとか。なので例に漏れず回収したんですけど、

もし何も行動しなかったら何が起こるんだろう?っていうゲームとしては正しくない興味を持った結果、「ゲーム中の主人公がプレイヤーの手を完全に離れ、操作の根幹である『選択』を放棄する」という恐怖感がすさまじかったです。

最終パレス時のみ他の期限切れエンドと大幅に演出が違い、他パレスでは行動を起こさなかった事で社会的に抹殺、命を失ってしまうのですが、これは静かな恐怖というか、永遠に出口のない温室みたいな感じで…。

期限まで活動しないということは、こういうことでしょ?と言われている気がしました。邪悪な好奇心をミラーリングされてるみたいな……。ここまで「い、嫌………」というやるせなさを感じさせられたの、ハァ~一生ペルソナシリーズ愛しますが……になりました

 

 

追加要素のスタンディングオベーションしたくなるような皮肉ぶりは一旦置いておいて、純粋に本編と対比してのシナリオもすごくよかった。

初めはほんの1生徒の、教師に対する反逆心をきっかけとして起きたものがどんどん対世界に拡がり、ひいては「抗う人類の総意VS神」になっていった本編と、
反面現実を書き換える神のような力と戦い向き合ううちに最終的には「どうして自分が」っていうたった1人の人間の感情を、生身の主人公が受け止めることで世界が収束する3学期の対比が本当に良い。

人類の髄を集めた悪魔の王の徹甲弾で倒せたヤルダバオトと、

1人の「一緒に帰ろう/終わりにはさせない」の言葉で倒せた丸喜…という…。

 

丸喜先生はそれまで怪盗団たちが抗ってきた所謂「クソな大人(悪人)」とはスタンスが違い、善意を突き詰めた「狂人」であって(※一番厄介)、

狂気の発端は大切な人と自分に降りかかった不幸であり、「どうして『僕たちが』理不尽な目に遭わなきゃいけなかったんだ」という個人的の感情を消化できないまま曲解の力を得てしまったことで、己を置き去りにして「自分以外すべての人類の幸福」が願いになってしまった。

大人のペルソナ使い、敵対する、研究員…ていう今までのシリーズでもあった「大概やべーやつ」の枠ではあるんですけど、行動原理自体に悪意は全くなくて、そのため和解して更生する新しいレールを走ったキャラなのがめちゃくちゃよいな〜と思っています。

むしろ理不尽な現実への反逆心でペルソナを覚醒し、戦いの中で覚悟を得てペルソナを進化させたという点で変則的な「もう1人の主人公」枠でもあるのかな〜とも…。3〜5の主人公全般に言えることですが、他人と関わり、その人の抱える悩みや問題に触れ、聞き役となりつつ結果的に生き方を導く過程は『カウンセリング』に似ていると思います。

ことさら5の主人公は多種多様な人たちに『不思議と色んな事を話してしまう』とよく言われていたような…。そして丸喜先生も怪盗団のメンバーから同じことを言われていたような。*3

それから、主人公達学生にとっての大きな節目や転機として「卒業」「新生活」ていうイベントがあると思うのですが(3学期は殊更強調されていた)、

学生でない大人の大きな節目っていわゆる「結婚」「転職」じゃないですか。私はゲームの主人公として高校生活やってましたけど、実際は一応いっぱしの社会人なわけで、トゥルーエンディングに出てくる丸喜先生の「大人でもやり直せる、いつからでも再出発できる」というメッセージが……また違う方向からメチャクチャ刺さる……………

(丸喜先生が恋人と婚約していこと、格好が白タキシードであること*4も踏まえてラストで第二の人生を歩む様で本当に胸が苦しくなります)

ペルソナシリーズももう長く続く大型タイトルですし、ジュブナイルとはいえ「大人」の層にも救いを与えてくれてる……とそんなことを感じました。

 

と、長々とした感想でした。

こうした感想も、私が自分の理解できる範囲に置き換えて見ているだけの曲解なのかもしれません。人は見たいものを見たいように見、信じたいものを信じたいように信じる生き物です。

 

そんなこんなで、クリアして2週間経ちようやくここまで言語化ができました。衝撃的だった…。2周目やりつつ、また何か思い出したら書き足すかも。

 

 

いちオタクの感想をここまで読んでいただきありがとうございました。今後の5の展開も楽しみです。

 

 

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丸喜の現実で唯一個人としての幸せを手に入れられていないのが丸喜本人なのマジで無理人(むりんちゅ)になってしまった 先生の本を作り始めたら笑って下さい。

 

 

(2020/03/21追記)

本出ました 笑って下さい

*1:一番究極だなと思ったのは「死と向き合う」がテーマのP3と「真実と向き合う」がテーマのP4がクロスオーバーする舞台に「真実に向き合ったことで自身が既に死んでいたことを思い知らされる最初から未来のない少女」を出すところ

*2:己の睡眠時間休日全てを犠牲にしても同人誌出すタイプのオタクか????死ネタ地雷過激派

*3:髪型のシルエットや眼鏡等わりと主人公に近いのもそういう意図があったりするのかな…?妄想ですが…。副島さんそういう、細かい要素も造形キッチリ詰めてデザインなされる方なので…

*4:マルキパレス、研究所と結婚式場のダブルイメージなのかな〜…